本研究所の歩み

本研究所は、早稲田大学理工学部生産研究所を母体に、更に対象を拡張して産学連携のサプライチェーンとロジスティクスの関係を研究する場として1996年に発足しました。新しい大学院として「アジア太平洋研究科」が創設されたのと軌を一にします。アジア太平洋研究科が設立された時、生産研究所で工場設計・デザイン思考が専門だった高橋輝男先生(現名誉教授)が「サプライチェーンとロジスティクス研究は「文理融合」のモデルとなる」として「ネオ・ロジスティクス共同研究会」と命名し、アジア太平洋研究科の中で取組みが始まりました。

当初は生産が中心でしたが、やがて領域を拡げ、建設資材の共同購入、共同配送に取り組み、「建築市場」という発想も生まれました。

2000年に入り、三菱化学エンジニアリングのご支援もあり、米国ジョージア工科大学との交流が始まりました。E.H.フレーゼル先生の来日などを含め、2006年にフレーゼル先生がテキスト『Supply Chain Logistics』を出版され、翌年、このテキストは日本でも伝統的に海外との研究連携に強みを持ったネオ・ロジスティクス共同研究会有志の手によって白桃書房から翻訳版が出版されました。

 

時を経て、フレーゼル先生が「第五段階のロジスティクス進展」とした「グローバルロジスティクス」は更に重要性を増してきました。今回のコロナ禍においても、ワクチンの温度管理をはじめ、コロナ禍による港湾労働者への影響で米国西海岸での大幅滞船による輸送遅延、工場での労働作業停滞による半導体不足の様々な分野への影響など、例を挙げれば

きりがありません。さらには、コールドチェーン分野においても、国際標準化の動きが出てきております。

本研究所はこうしたサプライチェーンとロジスティクスの最新課題を、会員制のマンスリーコロキウム(研究会)を開催することにより、会員企業および協力者の皆様と一緒に議論する場を提供してきました。20年以上継続して行ってきたことは、先駆者的役割を果たしてきたのではないかと自負しております。

 

高橋輝男先生の後、藤田精一先生、黒須誠司先生、浦田秀次郎先生が所長を務められ、

横田一彦先生で所長は5代目となります。一層の進展に挑んでまいります。